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カナダ 世界リゾート地の舞台裏 part. Ⅱセミナー　ハイライト― テーマ　MICEツーリズム ―





2021.04.22



スノーリゾートで有名なウィスラーは、MICEとしても機能するオールシーズンの観光都市へ発展していきました。その過程では、様々な人々が関わって進められていくわけですが、その中心人物のひとりが今回講演したモーリーンです。ウィスラーの独創的なMICEを切り口に講演が行われました。





【講師】モーリーン・ダグラス　モーリーン・ダグラス社　代表

https://maureendouglas.com/

公共機関、職場、リーダーシップ・エンゲージメントの専門家として、政府、団体、観光業、大規模イベントなどで、信頼を築きながら持続的な変化をもたらす戦略を実現すための支援を行う。バンクーバーオリンピックでは、コミュニティ・リレーションズ担当ディレクターを務める。パワフルでポジティブな人柄でクライアントや同僚に人望が厚い。


セミナーハイライト



ウィスラーと軽井沢が姉妹都市であることを光栄に思っております。軽井沢セミナー開催の日にこのプレゼンテーションを行えることを嬉しく感じております。この30年をかけて、ウィスラーはスキーリゾートからオールシーズンリゾートに変化してきました。ウィスラーは1987年夏の観光客数は約10万人でした。現在2021年の時点で年間300万人が訪れる場所になったのです。ここでお話しするのは、通常のMICEではなく、ウィスラーの構築してきたMICEです。



ウィスラーのMICEは、M（マーベリック：型破り）、I（イノベーション：革新）、C（コラボレーション：協働）、E（エクスペリエンス：経験）です。リスクを持たず先見性を持った人が未来を作ります。また、革新的に大胆なアイデアを実施し、他の人々と違うことを恐れず、お互いそして他のコミュニティと協力していき、最終的にはオールシーズンには多様な体験を提供していきます。こうした小さな積み重ねにより、いろいろな体験を各シーズンに提供していくことが動機付けとなると共に、成功へと繋がっていきます。



こちらは、1900年代初めのウィスラーです。ハイキングや釣りなどが楽しまれていました。ここから始めた人たちは、リスクを厭わない人たちでした。



ウィスラーリゾートのスタートを築いたフランツをご紹介しましょう。ちょうどあの辺りがウィスラーのスキーリゾートがいいじゃないか？と指差しているところです。まだ何もないときですね。



1968年、バンクーバーにオリンピックのチャンスがやってきました。まだオリンピックをするには準備がたくさんありすぎると残念ながら実現しませんでしたが、そこでウィスラーの人々が歩みを止めることはありませんでした。その後招致を継続し、ついに2010年にバンクーバーオリンピックが実現する訳ですが、決してあきらめてはいけない。ということを学びました。夢は実現したのです。



こちらは、スキー場にリフトを建設し始めている頃の写真です。



このようにリフトの運用が始まると、“スキーができる素晴らしい山がある！”とたくさんの人々が訪れるようになったのです。



当時はまだ小さな街でしたが、人々が住めるように区画整理が行われ、3千ドルで土地を購入し、家を建てることができるようにしました。最終的には200万ドルにまでなっていますが、当時はまだ3千ドルでも高いと思う人もいました。



街のリーダーはこの頃、もっと大きな計画が必要ではないのか？と感じ始めていました。当時中心となったのが、ドリュー・メレディス市長と素晴らしい街の景観をデザインするビレッジデザイナーのエルドン・ベックでした。当時から、今ウィスラーに見られるような歩道のある街を、まるでウィスラーを家のように感じながら観光地を作り上げてきたのです。



こちらはごく初期のエルドンの手描きの図面です。彼は、すべての山、景観、太陽の角度、山の位置、あらゆる場面を考え、訪れる人たちがどんなことを体験できるのか？を想像しました。



こちらはもう少し洗練された図面ですけれども、現在はこの３倍くらいの街の大きさになっています。



1970年代半ばまでに大規模な建築が始まりました。1979年のウィスラービレッジです。1975年から1995年まではウィスラーには冬と建築している季節しかない、と言われたものです。それ程、街を作り上げるのに建築を長く手がけてきているということです。夏中はずっと工事が行われてきました。



こちらは、1984年のウィスラービレッジの模様です。



イノベーティブな要素として、ブラッコムスキー場が建設され、1980年代のウィスラーは大規模なスキーリゾート地になりました。雪のレベルもよく、日本人の観光客も多く訪れるようになりました。



ビレッジデザイナーのエルドンがどんなコンセプトでウィスラーをデザインしたのか？彼自身が語っている映像があります。彼のコンセプトは、今日のリゾート地の設計にも通じるところが多いにあることでしょう。 “歩行者天国を可能な限り取り入れ、多様性もこの場合とても重要で、日常生活以外の体験を提供します。ウィスラーに来て、箱型の店舗では台無しです。探求する機会を提供し、サプライズを発見してもらうのです。デザインの質は一貫したレベルのものを、全体から詳細に至るまであらゆるレベルで揃えるということです。”　（映像よりエルドンの言葉）



エルドンのデザインで素晴さのひとつは、歩行者天国です。車の往来に気を取られることなく、美しい景観を眺めながらリラックスして過ごすことができるのです。ビレッジと美しい自然との融合以上に何ができるでしょうか。



1980年代には、ストリートパフォーマンスが始まりました。想像力を駆使して、山でのコンサートも始まり、夏にここだけのイベントを開発したのです。街では提供できないユニークな体験を来場者に提供していくということです。



こちらはウィスラーの図書館になりますが、レベルの高い建築物を建てることも大切にし、サステナブルなLEED認定を受けています。エネルギーの面、屋根の素材、熱交換の面など、環境に負担を与えない評価システムです。



山と山を繋ぐゴンドラのコンセプトは昔から冗談としてしか捉えられませんでしたが、他とは違ったものを実現し提供することは大変にイノベーティブです。



（画像はウィスラーMICEプロモーション映像より）

映像はこちら　https://youtu.be/RAAyGroSht4

このプロモーション映像は、一言も言葉はありません。経験を感じていただいて、ウィスラーでこのようなことが待っている、ということをイノベーション通じてチームで夢を語り合い企画したものです。



私たちは、より多くの協働（C：コラボレーション）が可能となりました。ひとつのウィスラーしかなく、ひとつのユニークな経験を提供できる、ということをいろんなレベルの人たちが協働して作り上げるのです。



ウィスラーの心臓部は自治体にありますけれども、これら複数の企業がまるでひとつの企業のように、同じ目標に向かって活動してきました。



その中で、10年毎に同じビジョンを共有してまいりました。 1960年代はスキー場の構築から始まり、最近の中で2010年代はオールシーズンがビジョンとして入ってきています。



オリンピック後、オリンピックビレッジは投資により市場の半額で100家族・2,000人の人々が住めるようにしました。リゾート地で働く人々の居住施設というコンセプトです。



我々の行動には高いスタンダードがあるわけですが、ビジョンを共有する中で自然のものをコミュニティに反映させることを応援しています。ウィスラーの成長に関しては、アート、カルチャー、ホスピタリティ、小売り、社会サービス、非営利団体など、様々な団体な協働してきたことでウィスラーをダイナミックなリゾート地に育て上げてきました。



特別な経験として、夏のシーズンの課題がありました。イベントは多くの年代の方たちに参加いただけますので、いろんな種類のイベントを春から夏、秋にかけて行い、時間はかかりましたけれども、こうした経験を通して、たくさんの人が訪れてくれるリゾートを作り上げることができるのです。スポーツのような、固定した観客の集うイベントで認知を上げることも大切です。



イベントは自然を際立たせますから、そのようなイベントを行うのがよいでしょう。都会でできる事をするのではなく、自然の中で他にはない体験の場を作ることです。こちらは、山の頂上でのコンサートや、オリンピックのレガシーを活かしたスケートリンクの例です。



また、この象徴的な建物をご覧ください。建築はウィスラーでは重要なものです。素晴らしい木を使い建設されており、先住民の文化が体験することができます。建築家は、この後のセミナーで講演のアルフレッド・ウォー氏です。



コミュニティの資産として重要な例をご紹介します。美しく機能性に長け、非常に魅力があります。コミュニティの人々だけでなく、訪れる人にとっても同様です。



こちらは図書館の中になりますが、このようにコミュニティとしても利用され、教育・イベントとしても利用され、カナダハウスとしても活用されています。



（画像はARTS FOR ALLプロモーション映像より）

映像はこちら　https://youtu.be/C19aXiSZhEg

ショルダーシーズンの春と秋のウィスラーは、天候がなかなかよいとも限りません。そこで室内でも楽しめ、秋の芸術の時期にウィスラーでアートを楽しんでもらうARTS FOR ALLというアートのイベントも立ち上げました。



今日お話したかったのは、こちらに書かれているMICEです。型にはまったものではなく、唯一のもの、みなさんは本物の体験を求めています。どうぞみなさんのやり方を恐れないでください。他にはないものである事が求められているのです。そして、それぞれ違う組織や団体の人々が協力していくことが大切です。



最後になりますが、リゾートコミュニティを構築するということは、たくさんの気持ち、いろんなことがまとまらなければいけません。ウィスラーの中心にあるのは、素晴らしいコミュニティを目の当たりにするということです。その場所を愛している、ということです。素晴らしい体験を構築したいと思い、お互いを支え合う事です。今はコロナ禍ではありますが、私たちはまたそこからも復活することを信じています。



Q＆Aより





Q： MICEにはリゾートの体験が商品になるということで人が多く訪れる、というように理解しましたがいかがでしょうか？

A： その通りです。会議場を含めて、MICEの滞在中にどのような体験をしてもらうかは大変重要だと思います。

Q：ウィスラーの街が素晴らしい建築物を建てる際に大変な資金がいると思いますが、どのようにコミュニティ関係者を説得していくのでしょうか？

A：ここに住む人々は、コミュニティが自然を反映して美しく、コミュニティにマッチする資産が必要ということ理解しています。今は、サステナブルな建物であるべきだということもその流れからきています。



カナダリゾートセミナーは、ご好評につき、
今後も開催を予定しております。



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