アフター・コロナの住宅設計と輸入住宅第2の波





2020.05.19



日本では25年前に北米のライフスタイルや快適な住空間を取り入れた輸入住宅が流行しました。新型コロナウィルスは社会のあり様を変えつつあり、日本では再び北米のスタイル、特にテレワーク化が進んでいます。在宅勤務はカナダでは20年以上前から広く受け入れられています。そのため、カナダの住宅は昔からテレワークを意識して設計されてきました。そこに、日本の建築家や住宅メーカーが取り入れられるヒントがあるのではないでしょうか。





まず、在宅勤務へのシフトを見てみましょう。カナダでは人々は好きなときにあるいは必要に応じて、在宅で仕事をしてきました。今はフルタイムで在宅勤務をしており、企業は社員の効率が上がったことに気づいています。さらに、テレワークによってオフィスの家賃を大幅に削減できることは、不確実な経済状況の中では非常に魅力的です。企業は安全性や効率、そしてコスト削減のために在宅勤務を推進したいと考えます。社員は通勤にかかる時間とお金の無駄を省き、より良いワークライフバランスを実現できることを実感しています。


これまでテレワークを導入する日本の企業はあまり多くありませんでしたが、中小企業を中心に既にオフィスコストを削減して費用の節約を実現している企業があります。さらに注目すべきなのは、テレワークという選択肢が人材採用に良い影響をもたらすということです。日経新聞は、テレワークを経験した若い世代の社員は、硬直したオフィス環境に押し戻そうとする企業で働くことを受け入れないだろうと報じています。片道60-90分もの時間を満員電車の中ウィルスの危険にさらされて過ごしたい人はいないでしょうから無理もありません。テレワークはまたワークライフバランスを自らの手にする機会を与えます。


高度なITインフラが整う韓国は、在宅勤務をいち早く取り入れた国でもあり、テレワークが住宅に及ぼす影響についてヒントを与えてくれます。在宅勤務の選択が与えられたことで、多くの人がソウルの混雑した地域を離れて郊外や田舎で2×4の一戸建て住宅を建てることを選び始めました。2×4住宅は、コンクリートのマンションに比べて健康的な室内環境を提供するだけでなく、ホームオフィスを持つ空間も与えてくれます。この傾向は韓国における2×4一戸建て住宅市場を年間1,000軒から年間18,000軒近くへ成長させました。


では、テレワークへのシフトは住宅設計にとって何を意味するでしょうか。再びカナダを見てみると、ホームオフィスの重要性が今までより高まっています。昔は、ホームオフィスを使うのは時々のことで一人ずつしか使っていなかったことでしょう。夫婦共にフルタイムで在宅勤務をするようになり、より多くのスペースが必要とされています。そのため、1つのコンセプトとしては、日中はオフィスとして、夜は家族やゲストの寝室として使える「フレックスルーム」を作ることが考えられています。この部屋に専用のバスルームを備えておけば、メインのバスルームを共有することなく、COVID-19にかかった家族を隔離するのにも使えます。カナダのキッチンメーカー、メリットキッチンでは、オフィス用品も収納できる機能的なダイニングルーム向けキャビネット製品があり、ダイニングルームをオフィスとしても利用したいと考える人々から注文が相次いでいます。 重要なのは、複数の作業エリアが使えるよう、できるだけ多くの部屋に柔軟性のある設計をすることです。


感染症対策の点から住宅設計について注目されているのは、「マッド(泥)ルーム」です。マッドルームとは基本的に、家に入る前に汚れた靴や濡れたコートを脱ぐことができる大きな玄関のようなものです。最近では、靴やコートに付着したウィルス対策として紫外線ランプを装備したり、「外着」から素早く着替えができるよう収納スペースを増やしたりといった工夫がなされています。キッチンでは、人気の自然石のカウンタートップを見直す動きもあります。天然石は多孔質で掃除がしにくく、消毒が難しいと見られ、代わってクォーツや人工のカウンタートップが推奨されています。メリットキッチンでは、ISO認証を取得した抗菌キャビネットのラインを新しく発売しました。


家で過ごす時間が増え、人々は空間をより快適で魅力的なものにしたいと考えるようになっています。それには、本物の木の美しさと温もりに勝るものはありません。商業ビルで見られる木を用いたモダンなデザインはホームインテリアに新しいアイデアを与えてくれます。また、バルコニーや庭で自然に触れたり感じたりできるよう、ウェスタンレッドシダーを用いた屋外空間にも注目が集まっています。


テレワークの経験が長いカナダの住宅設計は、日本の住宅メーカーに新しいアイデアや製品を提供し、ポスト・コロナの家づくりに役立つはずです。これが日本における輸入住宅第2の波になるかもしれません。BCウッドでは、このような情報をお求めの方のお手伝いをさせていただきますので、お気軽にメールでお問い合わせください。